磯部さん講演会~チャンスを掴む技術~

はじめに

4月18日、UT-virtual 0期生で、現在東京大学大学院建築修士の磯部宏太さんに、「チャンスを掴む技術 -普通の建築学生だった僕がVRクリエイターになるまで-」というタイトルで VRクリエイターの部員や新入生に向けて講演をしていただきました。

講演会当日の様子はこちらからご覧いただけます。

VRとの出会い

磯部さんVRとの出会いは本当に偶然だったようです。 建築学科4年の卒業間近、 UT-virtualが誕生する際に、「お前も入らないか」と中高時代からの友人に誘われ、面白そうだから入部。 修士に進学と共にVR制作を始め、提案だけで終わってしまう学部時代の建築と違ってVRが体験可能な価値を提供できることに感動して、どんどんのめりこむようになっていったそうです。

チャンスを掴む技術その1 -学び方-

磯部さんは、自分の経験を元に、チャンスを掴んでいくためには具体的にどうすればよいのかをアドバイスしてくれました。

まずは情報収集についてです。磯部さんは何か新しい領域に踏み込む際に有効な学習法としてVRを例に以下のようなものを挙げてくれました。

コミュニティに入る(UT-virtual、情報共有の敷居を下げる)
イベントに行きまくる( connpassのVR系の勉強会やUniteやCHI勉強会など、大量の情報を産業・アカデミア問わず多角的に大雑把に仕入れる )
・有名な人のTwitterをフォローする( 顧問の稲見教授など。その領域のトップランナーの人の考えや興味に触れる )
信頼できるソースに学ぶ( 技術的な面ならUnityの公式チュートリアル、リファレンスなど。動画だけでなくプロジェクトファイルがある教材が効率的。アカデミックな面ならVR学会の教科書や会員誌、論文など。 )

磯部さんはVRに新しく踏み込んだ際の例を用いていましたが、学習法として初期は大量の情報に強制的に触れるようにして大雑把にその新しく学ぶ領域全体の大きな地図を描き、その全体像を一先ず受け入れた上で学びの方向性を見定めていくのが良いとのことです。twitterやブログの情報は主観が混じっていたりと必ずしも正しいとは限らないので信頼できるソースを拠り所にしながらその分野での情報リテラシーを高めていき、量・質ともに豊かな情報を仕入れていくことが大事だと教えてくれました。

学び方に関してですが、とにかく作りながら学ぶことが大切だそうです。YouTubeなどには動画教材も出回っていますが、そういったものは離脱率が90%という調査も出ているそうです。
Unityであればまずは玉転がしやシューティングなどの簡単なゲーム作りから楽しみながら始めて、とにかく手を動かしていくうちに気が付いたら成長しているくらいがいいとのことです(動画教材の写経をしつつ、少しプログラムをいじって遊ぶとかも良い)。
UT-ⅴirtualなどのコミュニティで作ったものを気軽に共有できたり一緒にモノつくりをしたりするのもモチベーション維持にとても良いとおっしゃっていました。
ある程度慣れてきたらインターンに応募してプレッシャーのある実務環境で腕試しをするのも自己流の癖を修正するのに有効とのことです(磯部さんはVRスタートアップやゲーム会社等でエンジニアインターンをされたそうですが、他にもVR系の研究室の研究インターンなどもおすすめだそうです)。

チャンスを掴む技術その2 -作り方-

制作をする際には、初期段階ではアイデア出しが大切だと磯部さんは言います。
お題が決まっているのであればそのお題から連想されるテーマについてアイデアを発散し収束させて解像度を上げていきます(色々なアイデア発想の手法があるみたいです→追記)。
チーム開発の時も有効だそうです。アイデアを出し、作り、テストし、時に失敗し、またトライする。アイデアの検証時にも作品の質の向上を目指す時にも、この発想とトライアンドエラーのプロセスを素早く回すことが大事だそうです。

意外と肝心なのが、締め切りを設定すること。「締め切りまでに仕上げないと!」という気持ちの有無は、制作物完成に大きく関わってきます。 締め切り直前は技術吸収率も爆上がりします(個人談)。
UT-virtualの学生であれば、五月祭や夏フェスなどの機会をそういう意味で活用していくのは一つの手であるとおっしゃっていました。

そして、作品が出来たら、体験者を師匠に見立てて弟子になったつもりでいっぱいフィードバックをもらいましょう。初見の人に作品を見てもらうことで、独りよがりにならずに済みます。フィードバックを受けて体験の質の改善をしていきましょう (UT-ⅴirtualが出展前に部員でテストプレイ会を行っているのはとても良いとのことです) 。

作品を色んな場所で展示する機会もあると思います。 凝った体験にデザインして、現場にハードウェアが多く絡む場合に特に 大事なのは、「現場と同じ環境を作ってテストする」ことだそうです。
VRのセットアップだけなら問題は発生しにくいものの、複雑な現場では経験次第で想定外の問題が何かしら出てくるものだそうです。
例えば、プロジェクターを什器に隠して展示する予定が、向きによって熱がこもって時々電源が落ちてしまうなど(実際に磯部さんがロンドンでの中間発表展示で体験したことらしいです→エアフロ―を改善して解決)。
磯部さんは「Shadow after Shadow」の制作の際には展示会場と同じ3m四方の空間を研究室に用意し現場で使うプロジェクター用什器やHDMIやUSBやオーディオの配線、センサー配置、部屋の照度を再現してソフトウェアの最終調整を重ねたそうです。

チャンスを掴む技術その3 -残し方、伝え方-

作った作品をどう残していくか。展示に来なかった人にどう伝えていくか。展示に足を運んでくれて作品を体験する人はごくごく少数で、ほとんどの人はこの「残し、伝える」ことによって自分の作品を知ることになるわけですから、非常に大事な作業になります。

まずはアーカイブに残すことです。適切な写真を撮り、ビデオを撮ります。 VRならスクリーンショットやプレイ中のHMDの映像のキャプチャなども残すとよいでしょう。
次に、それらをメディアとしてまとめていきます。磯部さんは、まとめる方法として、大きく4つの手段を提案してくれました。

①PDFにまとめる

AdobeIllustratorInDesignを組み合わせれば綺麗なポートフォリオを作成することができます。 イラレでフロー図を作ったりしておけば、webに掲載する画像素材にも使えます。
https://issuu.com/ では、建築・グラフィック系などのポートフォリオが閲覧できるので、 PDF形式でまとめる際には参考にすると良いかもしれません。

②webサイトにまとめる

まとまった情報をwebサイトに残すことも有効です。
特にVRやメディアアート系は作って動作するものなので動画が訴求力が高く、動画を扱えるwebサイトの優先度は高いです。 自分でhtml cssを書くもよし、テンプレを使うもよし、 テンプレを使うもよし、無料のウェブ作成サービスから始めてもよし。
余裕があれば自己ドメインを獲得するとよいでしょう。見る人のことを考えて、スマホ表示への対応や画像軽量化による読み込み速度の向上などにも気を配りましょう。
(筆者注:磯部さんのwebサイトはこちら。参考になるのでぜひ一度ご覧ください! )

③動画にまとめる

作品を動画にまとめてSNSに投稿しましょう。数ある手段の中でも、動画は人に伝える手段としては特に強力です。
(筆者注:磯部さんが自身の作品を動画にアーカイブしてYouTubeに投稿したものがこちら↑です。 参考になると思いますのでぜひご覧になってください!)

④ノウハウをまとめる

次につなげるためにノウハウをまとめておくことも大切です。 プロジェクトファイルをGoogleDrive(東大生は5TB無料)GitHubにまとめて自分の別のプロジェクトに流用できるものはいつでも引き出せるようにしたり、Qiitaに記事投稿してこれから制作を行おうとしている他の人にも知を共有しましょう。

まとめ

磯部さんはまとめとして以下の3つのことを伝えてくれました。
・チャンスが来てわくわくしたら乗っていこう
・新しいことを学ぶのに怖がる必要はない
・新しい世界に飛び込むときも今までの蓄積を生かそう

とにかく面白く生きていきたい!ということをモットーに様々なことに挑み続けている磯部さん。そのプロセスで、自分の能力を最大限開花させられるような工夫をたくさんしてきたからこそ、色んなチャンスを掴んでいけるのだなと感じました。非常に参考になる話をたくさん聞けて本当に良かったです。ありがとうございました!

追記

磯部さんより以下補足になります。
アイデア出しの手法についてはブレーンストーミング、KJ法、マインドマップ、いろいろな手法がありますが、僕が良く使うプロジェクトの初期段階でのグループでのブレーンライティングの手法を軽くご紹介します。

量が質を生むという考えの元、思考の自由を保障するのが原則です。
アイデアをビジュアル重視で紙に沢山書き出し、大きな紙や壁にクラスタリングを意識しながら貼り出し、点数化していったり投票していったりして絞り込んでいき絞られたアイデアを出汁にまた少し拡散し収束するという拡散収束の連鎖のプロセスを踏んでいきます(写真は昨年ロンドンの留学先で主催したVRのアイデアソン+ハッカソンの3日間のワークショップの初日の様子)。

アイデアの拡散時にはアイデアに対して批判は避け、自由奔放に思考することを重視します。
アイデアを出してといきなり言っても出てくるものではないので、ぺルソナやシチュエーションを記したカードをランダムに引いてそれとお題を掛算して30-2分程度の短い制限時間の中で半強制的に可能な限りアイデアを絞りだします。
太めの視認性の高いペンでA5程度の紙に端的に1枚1アイデアを一行コンセプトと絵で表現していくのがポイントです。制限時間の後はそれをグループで素早くシェアして次の発想タイムに移行するか、アイデアをシェアせずに他の人のアイデアを紙をグループ内で回して連想伝言ゲームのように発展させていくのもいいでしょう。
アイデアの数がたまったら、アイデアをテーブル上で自由に動かしてクラスターを作ってタイトルを付けたり、評価軸を二軸で定めてマッピングしていったりして大局的に見れるようにしていき、メンバーで投票や点数化をして掘り下げるアイデアを絞っていきます。
利点としては自由な発想で網羅的にアイデアを出すことで無意識的に避けているようなアイデアも絞り込みの段階でグループの中でなぜそれがだめなのかが説明されたうえで落とされ暗黙の了解という不確定要素を潰せたり、思わぬアイデアの掛け合わせで新しい価値の可能性が見えてきたりすることがあります。

先日の暦本先生のツイートにもありましたが、質の高いアイデアの創出には前提知識のインプットはあればあるほど良いです。その上で敢えて一度思考の枠を外して発散するとより質の高い踏み込んだアイデアが出てきやすくなります。
意味で参加者に宿題としてお題に関して事前に調べてもらって面白いと思った切り口をワークの最初に共有してもらうのは有効です。
UT-virtualなら日頃の会話やチャンネルでの情報共有、質の高いVRやエンタメのコンテンツを知ることなども良いアイデアを生むベースになるでしょう。

とはいえこうして文字で表現しきれない実践してなんぼな側面が多いので、せっかくなので部室のホワイトボードを使って夏フェスに向けてブレインライティング会を開催してみると面白いかもしれませんね。

磯部さんについてはこちら
(本記事が気に入ったら是非twitterフォローして下さい!とのことです!)
webサイト:http://kotaisobe.com

Twitter: https://twitter.com/theruleisobeyed

お問い合わせ: [email protected]

(文:Atsuhiko Isoguchi  写真・構成:Mari Kotani  監修・画像提供・追記: Kota Isobe )



お知らせ

第92回東京大学五月祭

– 日時 2019年5月18日(土)・19日(日) 10時~18時

– 場所 東京大学本郷キャンパス

  • 東京メトロ丸ノ内線 「本郷三丁目」駅 出口2から徒歩8分
  • 都営大江戸線「本郷三丁目」駅 出口3・4・5から徒歩6分
  • 東京メトロ南北線「東大前」駅 出口1から徒歩1分
  • 東京メトロ千代田線「根津」駅 出口1から徒歩8分

今回の五月祭では二企画同時開催致します

①『VR飛行体験 FlyFlyFly 改

– 場所   工学部1号館 2階 17号講義室

昨年の駒場祭の人気コンテンツ、「VR飛行体験 FlyFlyFly」がパワーアップして帰ってきました!
空を三種類の飛び方で飛べる体験です。
戦闘機から始まり、風船での浮遊、最後はペガサスの背中に乗って飛ぶことができます。
より没入感の高まった体験を、ぜひお楽しみください!

1回500円整理券制となっておりますので、お早めにお越しください。

②『UT-virtual Anthology

– 場所  工学部1号館 2階 16号講義室

UT-virtualの部員が自主制作したVR体験の数々を展示する企画です。
彼らが織りなす個性豊かな作品達を是非お楽しみください!

五月祭全体の「おすすめ企画」に選出されました!

1回券:200円 3回券:500円 フリーパス:1000円
整理券不要となっておりますので先着順でお楽しみいただけます。
全部で15作品の展示を予定しております。
お時間に余裕を持ってお運びください。