2019年2月22日(金)のUT-virtual定例会は、東京大学駒場第二キャンパス部室にて、株式会社MESON代表取締役社長 梶谷 健人氏をお招きし、ご講演いただきました。
梶谷氏は、AR/VRサービスの開発を行うMESON, Inc.のCEOとして、 国内最大手のアパレルメーカー、自動車メーカーなど数々の企業への新規サービスの立ち上げや、サービスデザイン、グロースハックのコンサルティング業務等、多岐に渡って幅広くご活躍です。
講演は2部構成で行われました。前半は「ARで世の中はどう進化していくのか?」と題してのお話でした。
導入として「Hyper Reality」や総務省の5Gイメージビデオ「5Gでつながる世界」など、5本のショートムービーを視聴し、3~5人のグループを作ってディスカッションを行いつつ、世界が今どのようなところに向かっていて、その中でARがどのような役割を果たすのか、そこから見えてくるARがどう変化していくのか、ということに関して考えながらお話しをうかがいました。
梶谷さんによると、世界はデジタル世界とフィジカル世界が結びついて重なって、今まで不可能だったことを可能にしようとしている。その中でARはソフト的なパイプとして二つの世界を結びつけようとしている、との事でした。そしてARが二つの世界を結びつけ、可能にしていく事として、具体的に6つの事例を挙げてくださいました。
- O/Oの超越 Online/Ofline間の断絶を埋める事で価値が出るもの
- 知覚の拡張 人間が生身で行うよりも高い精度で外界の情報を捉えられるようにすること
- 想像力の拡張 今まで想像上でおこなっていた作業をより具体的にイメージしやすくなること
- 物語の超越 絵画や玩具などのオブジェクトが持つストーリーを拡張すること
- 次元の超越 2次元に閉じていたオブジェクトを3次元に出現させること
- 距離の超越 遠隔にいるのに同じ空間にいるかのようなインタラクションを可能にすること
ARにフォーカスした企業の経営者である梶谷さんからのお言葉は、ひとつひとつが説得力を持つものでした。
後半は「意義と意味のあるARサービスの作り方」と題してのお話でした。
企業として、クライアントにARサービスを提案するにあたっては、それ自体の価値(意義)に加えて、ARである必要性(意味)が備わっている必要があると教えて頂きました。
米Leap Motion社によって設計図が公開されたARデバイス「Project North Star」を自作している部員はいるものの、私たち学生にとって、まだまだARデバイスは、価格の面からもなかなか手が出るものではありません。
ですが街中に出かけてみると、スマホアプリを用いたゲームや、道案内、イベント等でのインタラクション等、思いのほかARサービスが既に身近にある事に気付かされます。そして、いわゆる一般ユーザーと呼ばれる方々の老若男女年齢を問わず、それと気が付かないうちにARサービスを利用している人たちは実は多いのではないかと思わされます。
お客様の声にならない声のなかから、本人すら気が付かない、真に必要とされているものをくみ取って、具体的な体験のデザインを考え提案し、構築していく事の必要性と大切さを改めて実感いたしました。
ARサービスの分野の先駆者であり、道なき道を切り拓いていらっしゃる梶谷さんの講演は、部員一同大変刺激になり、勉強になりました。お忙しいところお運び頂き、貴重なお話を賜り誠にありがとうございました。
(文・写真:Mari Kotani)